パートナー



「傘、いらなかった…………?」
「ゴメン、止んでたから。」

そう、と呟くと、母さんは歩いた。
私の『椅子』を押しながら。

私は、下半身麻痺者である。
小さい頃に足に大怪我をしてした麻酔。
それが運悪く失敗された。
そして、起きたら動かなかった。

最初は人の目も嫌だったけど、
少しずつ慣れてしまった。
でも、それが悲しいのに変わりはなかった。

「ねえ、明日、貴方の誕生日でしょう。」
「うん。」
「何か欲しい物ある?」
「欲しい物…………?」

欲しい物なんて、叶わない。
私はダンサーになりたかった。
その所為でなった身体。
それでもダンスは好きだった。

欲しいのは、ダンスをする足。
走れる足。
風も体温も感じる足。



< 2 / 62 >

この作品をシェア

pagetop