パートナー












“キィッ”

車が暗くなった病院の前で止まる。
救急の赤ランプと
非常口の緑ランプが重なって光る。

愛海はまだ戸惑っていた。
内心、走って早く行きたいという気持ち。
それがあったけれど言えないままだった。

「田中さんは、お姉ちゃんが好きなの?」
「……人は誰でも好きだよ」
「そうじゃなくて、ちゃんと」

田中は何も言わなかった。
愛海の手をギュッと握ってただ歩いた。
すれ違う看護師が不思議そうに見ていた。

集中治療室は三階。
消毒とアルコールの匂いが鼻を突いた。

「お姉ちゃん、集治なんだ」
「うん。今も治療中かな」
「……死なないよね」
「分からない」

田中はいつもより沈んだ声で話した。
死という言葉に怯えているようだった。

愛海も怯えていた。
好意という気持ちとは別に
彼の手を思い切り強く握っていた。

「……本当は、大好きだよ」
「?」
「お姉ちゃんは、誰にでも優しくて。障害なんか気にせずに皆が寄ってくるの。……私を見てくれなくても、皆褒めてくれた。嬉しいけど、ムカついた」
「…………」
「頑張ってるのはあたしなのにって、時々泣いちゃったりもしてさ、羨ましさで嫉妬しちゃってたんだよね」

治療中のランプが消える。

愛海は頬を濡らしていた。
耐え切れずに声を漏らし始める。
田中は何も言わずに見ていた。

「大好きだけど、凄く意地悪しちゃってた。すごい好きだって、言った事ない。慰めて同情するふりして、あたしは優位に立ってるってお姉ちゃんに見せ付けてた……。あたし、最低だよ……」

ベンチの上に体育座りをして泣いていた。
田中が始めて見た彼女の弱さだった。












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