【番】甘々なボスに、とろけそうです。
別に、それでいい。
ミコのそんな顔を見れたのだから、新幹線を遅らせた価値が十二分にある。
だが……
「するんじゃなかったかな」
「ハヤトさん?」
予定変更なんて。
余計、離れたくなくなったから。
俺がこんなに女々しいなんて、お前は、知らないだろう?
「室井に丸投げしようか」
「そっ……そんなことを言って、仕事モードに切り替わったボスは凄いんですから!」
ミコ。
お前は、俺のことを、盲目的に信用しているようだが。
俺は、お前が思っているほど……立派なやつじゃない。
若くして周りよりも目立っちまったもんだから、舐められたくなくて、こんなナリをしているだけだ。
本当は、ずっと……弱くて脆い。
お前は、自分のことをどこにでもいると言ったが。そんなわけあるか。
お前が俺を、まだまだ、強がらせてくれる。
「ミコのためなら、破滅の道を選んでしまいそうだよ」
「えぇっ? 破滅ですか?」
「あぁ」
「いけません、そんなの」
当たり前だ。
結局俺は、仕事に行く。お前を置いていってしまう。
社員を路頭に迷わせるわけにはいかない。人様と一度交わした約束は、守る。
なんて……そんなのは、なんだかんだ仕事が好きな俺の傲慢な言い訳なのかもしれない。
だがな、ミコ。
俺は本当に、心からお前のことが大切なんだ。