【番】甘々なボスに、とろけそうです。
ちょうど出来上がった頃、バタンと玄関の扉が開け閉めされる音が聞こえてきた。エプロンをつけたまま、急ぎ足で玄関へと向かう。
「おかえりなさい、ハヤトさん!」
ボスのことを名前で呼ぶのは、まだちょっと恥ずかしい。
「ただいま、ミコ」
上下黒のスーツに黒シャツ、黒髪オールバックのボス。
「鞄と上着、あずかります」
「そんなことより」
鞄を床に置くと、ギュッと正面から抱きしめられた。
「は、ハヤト……さん?」
「良い香りがするな」
「今、ご飯作ってたから……完成しました!」「ありがとう」
大好きな人に包み込まれて、ドキドキしないわけがない。すぐに離れると思っていたのだけれど、なぜかいつまでも離れないボス。
「……っ!?」
突然のキス。それも、ソフトなのじゃなくて……。
舌をからませ。エプロンの中には、大きな手がナチュラルに侵入してくる。
あの、ボス。ここは、玄関ですよ?
黒豹の如く襲いかかるボスに、次第に全身から力が抜けていく。
立っているのが辛くなってきた――そのとき。
「今日の夕飯はなにかな」
ボスの唇が……、離れた。