無理すんなよ。
どうして……私ばっかり。遥は体が弱いんだから、私がしっかりしなきゃいけない。そんなことはわかってるの。
だから、お母さんが描いてるであろう理想の姉に近づくために、家事も勉強もおろそかにせず頑張ってきた。
でも、それでも、お母さんは私にさらに上を求める。この努力じゃまだ不十分だと、圧力をかける。
こんなことを考えてる私がいること自体が嫌。こんな醜い思いを抱いてるなんて、みんなには絶対言えない。
「もう、なんなのよ……。あなたのせいで気分が台なしだわ」
深いため息とともにそう言い残し、お母さんは病室の外へ出ていった。
それと同時に、一気に肩の荷が降りたように感覚がしてホッと息をつく。
「……琴葉、俺と抜けよう」
そして最初に耳に飛び込んできたのは、家の事情を聞いても話しかけてくれたのは。
桜庭くんだった。
どうして彼には私が困っていたらお見通しなんだろう。いつだって助け舟を出して、心を軽くしてくれる。