無理すんなよ。


「は……るっ」




正直、息苦しかった。



病院だってたくさんの人がいるわけで、もちろん人混みに決まってる。



遥のためとはいえど、そんな場所に自分から進んで入って行くなんて、気が滅入ってしまいそうだった。





「あれ、琴?もうそんな時間?」



呼吸を落ち着かせて病室のドアを開けると、キョトンとした顔の遥がいる。



「あれ?」は私のセリフだよ。まさか、自分の帰宅時間を忘れるなんて。



昨日はあんなに帰りたがって、『学校終わったらすぐに来てね』なんて年を押してたのに。




遥の回りには、いつの間に仲良くなったのか小さい子どもや看護師さんが数人いる。



どうやら、私が来る時間も忘れるくらい楽しく談笑していたらしい。




やっぱり、遥は遥のままだ。マイペースで少し抜けてるけど、誰よりも優しくて気配りができる。



だから必然といっていいほどに、人が近づいてくる。きっとそれが当たり前なんだろうけど。

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