無理すんなよ。


「私達、友達になろ!」



いきなりの言葉に、心底驚いた。



こんな私と『友達になる』なんて、そんなこと言う変人がこの世界にいたなんて。




「決まりね!私は、荒井麻莉奈」



「……村上琴葉、です」




なんて前向きな人なんだろう、荒井さんは。



用が済んだら、すぐに教室へ戻って行くんだと思ってた。




でも、荒井さんは違った。遥のことだけじゃなくて、私のことを見てくれた。



そして、今まで生きてきた中で誰にも言われたことのない『友達』という単語を教えてくれた。




「琴葉ちゃん、って呼ぶね。私のことは麻莉奈って呼んで!」



へぇ。荒井さんは─────訂正。麻莉奈は、人には「ちゃん」をつけるけど自分は名前で呼んでほしいタイプなんだ。



地味で暗い私のどこをどう見たら、友達になりたいなんて思うんだろう。



きっと一瞬の気の迷いに違いない。そうは思うけど。




それでも初めての友達に、私は胸を踊らせていた。



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