無理すんなよ。
「琴葉」
「琴、こっちこっちー」
テノールとアルト。そのふたつの声が重なりに、教室の視線が集まる。
今私の名前を呼んだのは、桜庭くんと遥。どうやら今日も迎えに来たらしい。
「は、遥生くんっ!今行くねー」
緊張してるせいか、いつもハキハキとした口調の麻莉奈も上ずってどこかぎこちない。
「待って、遥」
急かすように手を振る遥に向かって、少し大きめの声でそう言う。
遥や麻莉奈、桜庭くんは学年でも目立つ方の “ 光 ” にいる存在。
そんな中に目立たない私なんかが入ってもいいのかな。どうして仲間に入れてくれるのかな。
一緒にいても得することなんて何もないはずなのに、どうしてだろう。