無理すんなよ。
「ごめんな、遥生……。俺が1番近くで見てたっていうのに、お前のこと全然見れてなかったよな……」
悔しそうに歯を食いしばって、桜庭くんは拳を震わせる。そんな、桜庭くんのせいじゃないのに……。
「ねぇ、琴葉ちゃん。ここに来るまでに桜庭くんから聞いたの、遥生くんのこと。……重度の貧血、なんでしょ?」
「……うん」
いつも笑ってる麻莉奈も、今ばかりは真剣な表情をしてる。尋ねられた言葉には悲しみが込もっていた。
私の答えた声は、静かに消えていった。まだあまり頭の中が整理できてない。
「桜庭くん。遥はなんで走ったの……?」
きっとクラスの事情とか遥の気持ちとか、いろんなことが絡んでるんだと思う。
でも、遥に無理だけはしてほしくなかった。そのために私は存在していたのに。