無理すんなよ。
「……『僕だけ走れないのは嫌だ』って、遥生がそう言ったんだ」
私、そんなの聞いてないよ。そんなこと今まで1度もこぼしたことなかったじゃない。
遥はどんな気持ちだったんだろう。自分だけが取り残されて、他の人がずっと前を歩いてるように見えてたのかな?
「琴葉には言うなって口止めされてたんだ。言ったら止められるし、驚かせたいからって」
そんな……。確かに口止めはすると思うけど、どうしてもって言うならお母さんの説得に協力したのに。
なんで頼ってくれなかったの。なんで何も言ってくれないの。なんで、私から離れようとするの。
「は、るっ……遥っ、なん、で……!」
1度溢れてしまったら、その思いも涙も止まらなかった。感情が堰を切ったように流れてくる。
後ろからぬくもりに包まれて、麻莉奈も肩を震わせてることに気づいた。桜庭くんは黙って私の頭に手を置く。