無理すんなよ。


「このままじゃダメだって思って、距離を置いてたの。家でも学校でも関わらないようにしようって。でもっ……」



言葉にならない声が出てきて、口を抑える。もう気持ちが抑えきれない。




「私、どうしても遥を探しちゃうのっ……。こんなとき遥なら、遥がいたら、って。全然変われてないの……」



声が震えて、思わず感情的になる。気持ちが乱れたまま次の言葉を紡ごうとするけど、涙がそれを邪魔する。




「前に進めてないのは、私だけ……。遥がいなきゃダメなのも私だけ。全部、私が悪いの……っ!」



叫ぶようにそう言い切ると、優しいぬくもりに包まれた。何が起こってるのか理解に苦しむ。



嘘、なんで私は桜庭くんに抱きしめられてるの?気づけば腕の中にいて、もがいても離してくれない。





「……なんで言ってくれなかったんだよ」



言葉を発したかと思えば、第一声はそれだった。怒られると思っていたから、その反応には驚いてしまう。

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