ヒミツの夜、蛍の光の中で


「……氷川さんとは、どうなの」


「あぁ、上手くいっているよ」



氷川さん……?


って、誰?


先輩達の不思議な会話についていけず、ただ呆然と話を聞いていた。



「知陽の彼女。氷川怜蘭(ひかわれいら)さん」


付け足したように教えてくれた森本先輩。


けれど、反応しようと思ってもなかなか口が開かない。


そう、その名前を聞いた途端、心臓がドクリと音を立てた。



なんなんだろうか、この胸騒ぎは。何かが起こりそうな、そんな予感。


なぜかはわからないけれど、忘れずに刻んでおこう。そう思った。


氷川怜蘭さん。奥田先輩の彼女さんの名前を。



「……綺麗な名前ですね」


単純にそう思った。きっと見た目も心も綺麗な人なんだろうな。


なんて言ったって、爽やかな奥田先輩の彼女さんなんだから。
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