ヒミツの夜、蛍の光の中で

「だろ?怜蘭、マジで可愛いんだよ」


奥田先輩は鼻をかきながら、「へへっ」と笑う。


大事にされているんだな。その彼女さんは。



「もう、ノロケはやめろよ。後輩の前なんだし」


「悪い悪い」


全然大丈夫ですよ、と。そう言おうとしたのに言葉が出なかった。


なぜなら、目の前で仲良さそうに話す2人のうちの1人─────森本先輩が、とても寂しそうな目をしていたから。



……なんで?どうして?


今の会話の中に一体何があったって言うんだ?


森本先輩のその表情の理由がわからない。知りたいけれど、踏み入れてはいけない気がした。


ふたりの間には、きっと俺が触れちゃいけない何かがあるんだ。




「……先輩、早く行きましょう」


不審に思われたかもしれない。


どうしてもふたりのぎこちない雰囲気を見ているのが嫌で、自分から逃げ出してしまった。



でも俺は、友達同士のはずの先輩達が他人のように思えるこの空間が嫌だった。


だから早く、みんなのいる世界へ連れ戻したかったんだ。
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