ヒミツの夜、蛍の光の中で
◇◆◇
「蛍って、好きな人とかいないわけ?」
そう言って俺に話しかけてくるのは、中岩陸(なかいわりく)。
小柄な体つきにパッチリした目……と、可愛いって言葉が似合う男子。
そのくせ、口だけは毒舌。
見た目だけでは可愛いキャラなのに、毒舌だから悪ガキとしか見られないタイプの奴だ。
陸とは中学校からの友達で、高校でも同じクラスになった。
そして、部活も同じ。……というか、陸が勝手に俺と同じ部活を選んだだけなんだけれど。
……陸の奴、バスケなんてできないくせに無理しちゃってさ。
それも俺のためだってわかっているから、文句は言えないけれど。
「ま、いてもモテねーもんな、蛍」
「……うるせーよ。陸には言われたくねーし」
陸は惚れやすく、行動するのも早い。
だから好きになったらすぐに告白するが、それでOKをもらったことは1度もないと言う。
……俺だって、告られたことくらいはあるし。別に顔や性格がいいってわけじゃないけれど。
どちらも平均的。どうせどこにでもいるような奴ですよ、俺は。