ヒミツの夜、蛍の光の中で
そもそも、わかるのは顔と学年だけ。
そんなに多い選択肢の中からどうやって見つけ出すっていうんだ?
そんなの到底無理な話。だから、余計な詮索はやめよう。
知陽先輩と怜斗先輩の関係には、触れちゃいけないんだ。
俺が首を突っ込むことじゃないんだから。
俺はただ、目の前のことを一生懸命頑張っていればいいんだ。
だから……過去を振り返る必要も、未来を考える必要もない。
世の中には、知らなくていいことばかりが転がり落ちているのだから。
それを全部拾っていたらキリがないもんな。
なぁ、そうだろ─────?
と、どこにいるかもわからない、名前も知らない誰かに問いかけた。
お前は誰なんだ?俺の何をわかっていて、心の中に入り込もうとしているんだよ。
誰にも、誰かの過去を追求する権利なんてないのに。
人はなぜ知りたがるんだろう。
「蛍?」
「……っなんでも、ない」
俺の周りには、春とは思えない不穏な空気が流れていた。