ヒミツの夜、蛍の光の中で

そもそも、わかるのは顔と学年だけ。


そんなに多い選択肢の中からどうやって見つけ出すっていうんだ?


そんなの到底無理な話。だから、余計な詮索はやめよう。



知陽先輩と怜斗先輩の関係には、触れちゃいけないんだ。


俺が首を突っ込むことじゃないんだから。



俺はただ、目の前のことを一生懸命頑張っていればいいんだ。


だから……過去を振り返る必要も、未来を考える必要もない。


世の中には、知らなくていいことばかりが転がり落ちているのだから。


それを全部拾っていたらキリがないもんな。



なぁ、そうだろ─────?


と、どこにいるかもわからない、名前も知らない誰かに問いかけた。



お前は誰なんだ?俺の何をわかっていて、心の中に入り込もうとしているんだよ。


誰にも、誰かの過去を追求する権利なんてないのに。


人はなぜ知りたがるんだろう。



「蛍?」


「……っなんでも、ない」


俺の周りには、春とは思えない不穏な空気が流れていた。


< 15 / 29 >

この作品をシェア

pagetop