ヒミツの夜、蛍の光の中で
近くで見ると、さっきよりも綺麗な人だと思った。
動く度に上品な香りが舞う。
少しの沈黙が流れる中、口を開いたのは意外にも俺だった。
なぜか、この人になら話しかけても大丈夫だと思った。
「……知陽先輩の、彼女さんですよね」
そう尋ねると、彼女は少し顔を赤らめて「そうだよ」と言った。
そっか。やっぱりこの人が─────。
「知陽くんから聞いていたよ。蛍くんのこと」
俺のことを、知陽先輩から……?
顔もわからない彼女に、どんな話をしたと言うんだろう。
「真面目で熱意のある、まさに待ち望んでいた子だって」
そんな風に思ってくれていたなんて、知らなかった。
知陽先輩が正面から向き合おうとしてくれるから、俺もそれに応えているだけなのに。
結局、それは先輩のおかげ。