ヒミツの夜、蛍の光の中で
「いや、その……まぁ」
曖昧に答えると、その先輩は微笑みながら。
「そっかそっか、嬉しいなぁ」
また、笑顔を振りまく。
すごいな。どうしてこんなに笑顔でいられるんだろう。
それも作り笑いなんかじゃない。
本当の笑顔を、他人に見せられるなんて。
そういえば、この人はさっき全員に指示を出していた人だ。
ってことは部長だろうか。
こうやってひとつのことに熱中できるって、羨ましい。そしてかっこいいと思う。
「興味があるなら、あと少しで練習終わるし、待っててくれない?」
そう言われて時計を見ると、もう6時前を示していた。
この体育館に入ってきたのは、4時半くらいだった気がする。
もう2時間も経つなんて……。
そんなにバスケの世界に入り浸っていた、ってことか。
夢中になりすぎて時間を忘れるなんて、俺らしくない。