ヒミツの夜、蛍の光の中で

「いや、その……まぁ」


曖昧に答えると、その先輩は微笑みながら。


「そっかそっか、嬉しいなぁ」


また、笑顔を振りまく。



すごいな。どうしてこんなに笑顔でいられるんだろう。


それも作り笑いなんかじゃない。


本当の笑顔を、他人に見せられるなんて。



そういえば、この人はさっき全員に指示を出していた人だ。


ってことは部長だろうか。


こうやってひとつのことに熱中できるって、羨ましい。そしてかっこいいと思う。




「興味があるなら、あと少しで練習終わるし、待っててくれない?」


そう言われて時計を見ると、もう6時前を示していた。


この体育館に入ってきたのは、4時半くらいだった気がする。



もう2時間も経つなんて……。


そんなにバスケの世界に入り浸っていた、ってことか。


夢中になりすぎて時間を忘れるなんて、俺らしくない。
< 2 / 29 >

この作品をシェア

pagetop