ヒミツの夜、蛍の光の中で

「だから、よくここに来るの。ひとりになりたいときにね」


────ひとりになりたいとき、って。



やっぱり、氷川先輩も何かがある。


知陽先輩や怜斗先輩のように、きっと何か。



もしかしたら、ひとりでいるのが好きなだけかもしれない。


人とあまり関わりたくないだけかもしれない。


でも、あの表情は違う。何か不安や悲しみがあるから、あんな表情を見せたんだ。




すると、俺が無言でいるのに気づいたのか。


「あっ、ごめんね。なんでもないの」


気にしないで、と付け足して氷川先輩は笑う。


その顔もまた、寂しそうに。



なんでもないわけがない。今にも泣きそうな顔をしているのに。


でもきっと、触れてほしくないことなんだろう。



それなら、俺が知る必要なんてないんじゃないのか?


だって、何も知らない。何もわからない。


かける言葉さえも思いつかない。



────俺には、何もできない。
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