ヒミツの夜、蛍の光の中で
「蛍くんも本が大好きなんだね。あんなに熱のある紹介、初めて聞いたよ」
そう言って笑う先輩は……良かった。心から笑っている。
嬉しそうに笑う先輩は安心する。
でも、寂しそうに笑う先輩は不安になる。
だから、心からの笑顔でいてほしいのに。
俺が力になれることは、ない。
「……はい。特にミステリーが好きなんです」
それなら、俺は。先輩の前では何も知らない俺でいよう。
そうすれば、先輩だって無理をする必要もない。
「私も!私もミステリーが好きなんだ」
趣味が合うね、と。そう言った彼女は確かに笑っている。
それからは、先輩とミステリーの本に着いて語りながら放課後を過ごした。
気づけばもう5時を回っていて、窓を見ると空はオレンジ色に染まっている。
綺麗な、夕焼けだ。