ヒミツの夜、蛍の光の中で
リスクは高いけれど、大丈夫だ。
だって入部してから2週間が経った今日までずっと、知陽先輩のプレーを観察してきたんだから。
シュートまでのタメが長いこと。ドリブルで抜かれるのは必ず左側だということ。
何かいい案を思いついたときに笑みを見せること。とりあえずボールを取ろうと立ちはだかること。
全部全部、今日のような日のために研究済みだ。
「蛍っ、頑張れー!」
どうやら諦めたらしい陸は、コートの外から俺の応援をしている。
まったく、俺に先輩と1on1をさせる気なのかよ……。
ゴール前に現れた先輩。ついにこのときがきた。
もう休憩時間も残り少ない。
なんとしてもここで抜かなければ、決着はお預けになってしまうだろう。
先輩は左、右、左、右、左、右、右と動くはずだから。
ここは左へ動いて速攻だ。