ヒミツの夜、蛍の光の中で
一瞬の隙をついて左側に出た、と思った瞬間。
「読みが甘いんだよ、蛍」
そんなひと言とともに俺の手からボールは取られ、気づいたときには遅かった。
すでにボールは先輩の手の中。
障害がない中での先輩のドリブルは本当にしなやかでかっこいい。
────パシュッ。
その音とともに悟った。俺は負けたのだと。
まだ入部したばかりの1年生が勝てるわけないのに、なぜだか俺は勝ちたいと思っていた。
いつもならこんな出しゃばった行動はしないのに。
休憩時間終了の合図が出て、名残惜しいけれどコート外へ出ていこうとした。
「────蛍」
肩に手を置かれ、振り返る。
そこには、さっきまで俺が対戦していた人の姿があった。