ヒミツの夜、蛍の光の中で
静かにコクリと頷くと。
「俺は奥田知陽(おくだちはる)。バスケ部の部長だ」
そう言って、誇らしく笑う。
まだ乾ききっていない汗。
ほのかに残る青春を感じる香り。
この人、何か感じるものがある。そう思った。
やっぱり部長なんだな。でも部長がピッタリだな。
そんなことを思いながら、乾いた口を動かす。
「俺は、宮岸蛍(みやぎしほたる)です」
ペコッと頭を下げると、そこに視線が突き刺さる。
どうしたのか、と不思議に思っていると、その先輩はいきなり笑いだした。
「えっ?」
思わず口を開けてあんぐりとしてしまう。
「蛍、ね。いい名前じゃん」
蛍、と呼び捨てにされたことに驚いて目を見張った。
本当に気さくな先輩だな。
きっと、他の部員からも人気なんだろう。