ヒミツの夜、蛍の光の中で
「蛍、良かったよ」
帰り道、奥田先輩達と並んで帰っていた俺は、そんな言葉ひとつで嬉しくなった。
自信はなかったけれど、意外と俺でもやっていけるのかも。なんて、そんな希望が見えた気がした。
先輩の言葉って、こんなに心に染みるんだな。
「でもさすがだな、知陽」
「そうかー?」
奥田先輩と話しているのは、同じバスケ部の先輩である森本怜斗(もりもとれいと)先輩。
森本先輩は明るい奥田先輩とは違って少しクールだけど、話すと優しくて気遣いのできる人なんだとわかる。
トーンの低い声と大柄な体とは裏腹に、不器用ながら俺の心配をしてくれる。
この部活は、優しくて愉快な仲間達に囲まれているんだな。
今、森本先輩が言った『さすがだな』っていうのは、きっと新入部員の呼び込みのことだろう。
奥田先輩は、誰よりも声を張り上げてバスケ部の宣伝をしていた。
見ている人まで巻き込むような、熱い宣伝だったな。