君と恋がしたい短編集
人気者の林君。
今日は3月14日、ホワイトデー。
だからって私には何の関係もないんだけど。
「ねえ聞いて!林君からホワイトデーのお返しもらっちゃった」
「やったじゃん!」
ひそひそと話す女子の会話が耳に入る。
私だって林君からホワイトデーのお返し、もらいたかったよ。
だけど、仕方がない。
だって、『お返し』だから。
バレンタインデーにチョコをあげないともらえないものだから。
でも私にはそんな勇気なんかなくて。
みんなが人気者の林君にチョコをあげるのを見ながら、1か月前私はそのまま家に帰ったんだ。
「なあ!」
明るい声が教室の入り口から聞こえて、みんなの視線がそちらに向く。
周りの男子よりも少し下に見える明るい色の短髪。
林君。
ちょっとそこにいるだけなのに、大勢の人が彼のもとに集まっていく。
「なんだよ林、どうした~?」
「林君誰かに用なの?」
積極的な女子が、仲のいい男子が、うらやましい。