君と恋がしたい短編集
「ええっと、私に、何の御用で…?」
「ほんとおもしろいな、菜乃花ちゃん。っと、これ渡したくて」
林君はなにやらブレザーのポケットを探りだした。
「これ。ってうわ、はしっこ曲がっちゃった」
手の上に載っていたのは、端の方の少しひしゃげた小さな箱。
それを優しく私の手のひらに乗せると、私の手を包み込んで箱を握らせた。
見た目に似合わず意外と大きくてあったかくて、しっかりしてる。
触れられたところが心臓みたいにドキドキして熱くなっている。
「な、なんでこれを私に?」
かろうじて出た言葉。
緊張で頭がうまく回らない。
「だって今日、ホワイトデーだし?」
だったらこれは、『ホワイトデーのお返し』?
「だけど私、林君にチョコあげてないよ」
間違って渡しちゃったのかな。
もしそうだとしたら、舞い上がったら恥ずかしい。