君と恋がしたい短編集
2枚目の板チョコを口に入れながらちらりと隣を見る。
隣の席の酒井は私と同じようにバレンタインなんて無関係のようにいつものようにお弁当を食べていた。
私、夏香は隣の席の酒井に片想い中です。
だけどいつも言い争ってばかりで、本当に小学生みたいな会話しかできない。
だから私には、チョコを渡すなんて絶対に無理。
チョコなんか渡したら、毒でも入ってんのかってきっと受け取ってもらえない。
そんなことを考えながらもしっかりと酒井用のチョコを作ってきてしまった自分が嫌だ。
どうせ渡せやしないのに。
ふと目の前の板チョコを見る。
これくらいなら、渡せるかもしれない。
もらってもらえるかもしれない。
一欠片のチョコをつまむ。