大好きなきみへ、あの約束をもう一度
1章
見えない親友とクラスの人気者
「ねぇ、湊、夏休みは川に行かない?うん、それがいいと思うの」
「なに、突然。早織、川に何しに行くの?」
夏休みが間近に迫った7月中旬。
私、真木 湊(まき みなと)は、親友の折田 早織(おりた さおり)と、放課後の教室で、高校生活初めての夏休みの予定に花を咲かせていた。
「何しにって……バーベキューとか〜、泳いだりとか〜。考えただけで、楽しそうでしょ!」
早織の気持ちは、すでに夏休みに旅立ってる。
「えー、私は家で読書がいい」
そんな早織の期待を裏切るようで悪いが、本心を口にした。日に当たると茶色く見える、色素の薄い早織の長い髪と瞳。
それが夕日に照らされると、輝いて見えて、私は目を細めながらそう言った。
「出たよ、湊の引きこもり。もー、花の高校生なんだから、もっとアクティブにいこうよーっ」
「アクティブねぇ……」
私の親友は、根暗で引きこもりの私とは正反対。
底なしの明るさで、私を無理やり外へと連れ出す。
でも、そんな早織が、私にとっては光のようで、いつも私を照らしてくれていた。
「これから先も、こうして一緒に思い出を作ろうね!」
「なに、突然」
「いいじゃん、湊ともっと思い出作りたいの!」
この親友とは、高校一年からの付き合い。
長い付き合いとは言えないけれど、私は、もう何十年も付き合いがあるかのような、安定の居心地の良さを感じていた。
「ねぇ、湊、私たちずっと一緒だよ」
この、真っ直ぐな笑顔が、想いを隠さず伝えてくれる所が、私は好き。
早織といると、私まで明るくなれる気がするのだ。
「早織とは、何があっても離れない気がするんだよね」
「あたりまえ、私は湊の傍にいるよ」
そう、何があっても私たちの絆は消えない。
それを信じているから、私は迷わずに『ずっと』なんて不確かな言葉を、平然と使えた。
放課後の教室で、私達は顔を見合わせて微笑む。
そう、こんな風に……これから起こることなんて何にも知らないで、無邪気に笑えたんだ。
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