大好きなきみへ、あの約束をもう一度



「私の……弱い心が見せた幻だって、お医者さんは言ってた。極度のストレスを感じると……人は、幻覚を見ることがあるんだって」



でも、私はそれでも良かった。

私にとっては……ただの幻じゃないから。



「薬も飲んで、病院にも通った。だけど……早織は私の傍にずっといる……」



ねぇ、本当にこれは私の見てる幻覚なのかな?

だって、ちゃんと言葉も交わせる。

あの日から変わらない……私の知ってる早織のままなんだ。



「でもね、私はどんな形でも……早織が傍にいてくれるならいいの。だって、早織のおかげで……私はもう一度、心を取り戻せたからっ」


「っ……湊っ!!」



泣き笑いを浮かべれば、その瞬間に、海斗に強く抱きすくめられる。

その腕が、息ができないほど、苦しいほどに私を捕らえた。




「か、海斗……?」


「なんかっ……もう、よく分かんねぇけど、胸が痛い。湊が一番辛い時に、傍にいてやれたら良かったのにっ」



海斗……。


高校1年生の時、私と海斗は見かけたことがあるくらいで、接点なんて全く無かったもんね。


なのに、今はこうして私を支えてくれる、大切な人になってるなんて……不思議。



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