大好きなきみへ、あの約束をもう一度
信じてみたい人
次の日、身支度をしてリビングへとやってくると、すぐにキッチンからお母さんが顔を出した。
「おはよう、湊。もうご飯出来てるわよ」
「おはよう、お母さん。うん、ありがとう」
テーブルにやってくると、お母さんの言った通り、お味噌に鮭に煮物と朝食が並んでいる。
それに、ぐぅっと、お腹の虫が鳴った。
「いただきます」
「はい、どうぞ召し上がれ」
お母さんと2人席についたところで、朝食が始まった。
うちは、母子家庭でお母さんの2人暮らし。
お父さんは、私が生まれてすぐに離婚したから、顔も覚えてなかった。
それでも、お母さんに大切に育ててもらったから、お父さんがいない事に不満なんてない。
「ねぇ湊、ちゃんと薬は飲んでるの?」
私が、鮭に箸をつけたところで、心配そうにお母さんが尋ねてくる。
「うん、ちゃんと飲んでるから、心配しないで」
私の幻覚は……病院の先生から短期精神病性障害、1カ月以内に治まる病気だろうと言われてた。
だけど、1ヶ月以上たった今も私には親友の早織の姿が見えていて、治療として抗精神病薬や夜寝れない時は睡眠導入剤を飲むようにと言われてる。
前までは、通いで心理療法も受けに行ったりしてた。
でも……私にとって早織は、ただの幻覚なんかじゃない。
それに、治療をして消えてしまうのなら……治療なんてしなくていいとさえ思う。
だから、通っていた心理療法は勝手にやめて、せめて薬はと言うお母さんに、仕方なく薬は続けていた。