エリート外科医の一途な求愛
「ワンピース……やっぱり、昨日……?」


誰かに否定して欲しくて呟いたはいいけど、逆に確信を強めてしまった自分に気付く。


私が部屋を出た時、まさに入って来ようとしてたなら、マズい場面は何も見られていないと思う。
あの後、木山先生が中に入ったのなら、もちろん各務先生とも顔を合わせているはずだ。
それなら、木山先生に見られたことは、彼も知っているはず。
何をどこまで見られたかも、きっと。
だから、各務先生にもちゃんと確認した方がいい。


そこまで考えて、私はハッと息を飲んだ。
午前中、まさに昨日のことを話した時、各務先生は私に何か言い掛けてやめた。
あの時、本当はこのことを私に話そうとしたんじゃ……。


思考がそこに行き着いて、私はクルッと踵を返した。
テーブルに戻った私を、そこに残っていた二人が『どうしたの~?』と不思議そうに見上げてくる。
突然木山先生を追いかけた私に、興味津々の様子だけど。


それは笑って誤魔化して、まだ半分以上残っているざる蕎麦ののったトレーを持ち上げた。


「ごめん、先に戻るね」


それだけ言って、私は急ぎ足で学食を出た。
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