エリート外科医の一途な求愛
その週の水曜日、午後七時。
大学から五分ほどの距離にある、ちょっと小洒落た居酒屋のカウンターに座っていると、背後で店のドアが開く音が聞こえた。
ギクッとしながらそっと振り返る。
ドア口に立ってキョロキョロしていたその人が私に気付き、ニヤッと笑う。
その笑顔に、爬虫類に通じる気味の悪さを感じながら、私は小さく頭を下げて合図をした。
「待たせた? 悪いね~。出がけで研修医に捕まっちゃってさ……」
そう言ってネクタイを緩めながら私の隣の椅子に腰を下ろしたのは、木山先生だ。
『人気者は辛いよ~』とでも言いたいのか、来た早々から結構ご機嫌な様子。
黙っている私の手元にオレンジジュースのグラスがあるのを見て、彼はわずかに眉を寄せた。
「せっかくだから飲もうよ」と、私の返事も聞かずにビールのジョッキを二つオーダーする。
店員から受け取ったジョッキを、無理矢理私のジョッキにぶつけるように乾杯した後、木山先生は豪快に喉を鳴らして一気に半分くらいを飲み干した。
そして、なんとも気持ち良さそうに大きな息を吐いた。
そのまま、私に顔を向けてニッコリと笑い掛けてくる。
「最近は何に誘ってもいい返事がもらえなかったのに。仁科さんの方から飲みに誘ってくれるとはね」
上機嫌でどこか誇らしげにそう言われて、私のこめかみに一瞬青筋が立った。
大学から五分ほどの距離にある、ちょっと小洒落た居酒屋のカウンターに座っていると、背後で店のドアが開く音が聞こえた。
ギクッとしながらそっと振り返る。
ドア口に立ってキョロキョロしていたその人が私に気付き、ニヤッと笑う。
その笑顔に、爬虫類に通じる気味の悪さを感じながら、私は小さく頭を下げて合図をした。
「待たせた? 悪いね~。出がけで研修医に捕まっちゃってさ……」
そう言ってネクタイを緩めながら私の隣の椅子に腰を下ろしたのは、木山先生だ。
『人気者は辛いよ~』とでも言いたいのか、来た早々から結構ご機嫌な様子。
黙っている私の手元にオレンジジュースのグラスがあるのを見て、彼はわずかに眉を寄せた。
「せっかくだから飲もうよ」と、私の返事も聞かずにビールのジョッキを二つオーダーする。
店員から受け取ったジョッキを、無理矢理私のジョッキにぶつけるように乾杯した後、木山先生は豪快に喉を鳴らして一気に半分くらいを飲み干した。
そして、なんとも気持ち良さそうに大きな息を吐いた。
そのまま、私に顔を向けてニッコリと笑い掛けてくる。
「最近は何に誘ってもいい返事がもらえなかったのに。仁科さんの方から飲みに誘ってくれるとはね」
上機嫌でどこか誇らしげにそう言われて、私のこめかみに一瞬青筋が立った。