エリート外科医の一途な求愛
「に、日曜日の朝。木山先生が何を見たのか知りませんけど、なんか変な想像してるのなら、誤解ですから」


さっさと用件を済ましたい気持ちで、早口でそう言い募る。
上機嫌だった木山先生が、わずかにピクリと眉尻を上げた。


「変な想像って?」

「私があの朝、各務先生と一緒にいたって思ってますよね」

「ああ、そのこと」


背後を通りかかった店員に新しいジョッキを手渡され、木山先生はまたしても三分の一ほどを一気に煽った。


「き、木山先生が考えてるような変なことはないんです! 実は土曜日の夜に、私は各務先生の撮影に同行してたんですが、その途中で先生に救急のヘルプ要請が入って」


わずかに身体の軸を動かして、木山先生の方に向きながら、私はほとんど息継ぎすることもなく一気にそう言った。
木山先生は黙ったまま、私の顔を斜めの角度から見つめている。


「それで……私も病院に駆け付けたんですが、待ってる間に眠ってしまって……」

「ふ~ん?」


ビールを見つめたまま、声のトーンを抑え気味に平静を装って告げた私を、木山先生は頬杖をつき鼻を鳴らして先を促してくる。


そこまで説明して、さすがに口籠る。
いくらなんでも、同じソファで寄り添って眠ってました、なんて言ったら、誤解を解くことも出来なくなるんじゃないだろうか。
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