エリート外科医の一途な求愛
「……各務先生を陥れる為に、事実を捏造してでっち上げろって言うんですか?」


心の底から寒気がする感覚に耐えながら、私は木山先生に精一杯蔑む目を向けた。
それを見て、木山先生は『心外だ』と言うように口角を上げる。


「捏造しろとは言ってない。どっちにしても、非番だとは言え病院のドクター室に君を連れ込んだのは確かなんだ。俺じゃなくても、そういう疑いをかけるヤツはいくらでも出てくる」


わざとらしくゆっくり言われて、私の身体がビクッと震えた。


「そうなった時、嫌な思いをするのは女性の君でもあるだろう? 俺はそうならないように、最初から各務を排除しておけばいいって言ってるんだよ」


多分、立て続けに煽ったビールで、そこそこいい気分になってるんだろう。
木山先生は私に肩を近づけながらそう言って、私のサイドの髪にスッと指を通した。
それを耳に掛けて、私の横顔を露わにしようとする。


その手の汚らわしさが、私の怒りに火を点けた。


「さっ……わんないで!!」


全身の毛が逆立つかと思うくらい、ぞわーっと震えた。
私は思いっきり木山先生の手を振り払うと、ちょっと高いカウンターの椅子からほとんど飛び降りるようにして、床に足を着いた。
お財布からビール代のつもりで千円札を出し、カウンターに叩き付ける。
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