エリート外科医の一途な求愛
「木山先生は医局のクズだと、常々思ってましたけど、それ以下です。サイッテー」


そう言い切る私に、木山先生は一瞬呆気に取られた後、血走った目をくわっと剥いた。


「なにっ……!?」


唾を飛ばして言い返しながら、私と同じように椅子から立ち上がる木山先生の後ろを回って、私は店のドアに急いだ。
地下一階にあるお店を出て、ドアの前にある急な階段を一気に駆け上がる。
私よりちょっと遅れて、木山先生が一段抜かしで追い掛けてくる。


「仁科さん……!!」

「離してください、触んないでってば!!」


階段を上り切り、外の通りに飛び出した時、後ろから肘を掴まれた。
大きく肩から腕を動かし、木山先生の手を振り解こうとする。
勢いで振り仰いだ木山先生は、前に各務先生が私をからかったあの般若のお面、そのままの顔をしていた。


「だ、誰があなたなんかと手を組んで、各務先生を追い出そうなんてするもんですか! そういう卑怯でくだらないことに、私を巻き込まないでください!」


ブンッ!と手を振り、木山先生の手が私から離れると、怒りのあまり肩を震わせながら、キッと鋭い目で睨み付けた。


「卑怯だと!? 俺は女性の君が居心地悪くならないように、と……!」
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