エリート外科医の一途な求愛
「チャンスって、何を……」

「汚い言葉で言えば、付け込むってこと」


強気に仕掛けてくるそんな言葉に、私の胸がドキッと大きく跳ね上がった。
そのまま、無意識にもう一歩後ずさる。


「な、何言ってるんですか」

「もちろん、口説いてるんだよ。……これでも、同じ女をしつこく四度も口説くのは、初めてなんだけど」


そんなことを言って、彼は頬に触れていた手に力を込める。
私は出来る限り目を逸らして、小さく口を開いた。


「そ、そうする前に、今までの人は陥落してたって言いたいんですか」


これだから、モテることを自覚してる男って。
そんな気持ちを憚らない私の嫌味に、各務先生はクッと肩を揺らして笑った。


「まあね。だから正直、この先は俺にも結構未知」

「わ、私じゃなくてもいいじゃないですか。各務先生に口説かれれば、みんな喜んでついて来るんだから。何も、未知で不安な領域に踏み込まなくても……」


死ぬほどドキドキしてるのを見透かされたくなくて、私はわざと素っ気なくそう言い切った。
顔を背けたまま目線を合わせない私に、各務先生は頭上で短い息を吐きながら笑った。


「それを怖がる医師じゃ、存在自体無意味だろう」

「ドクターとしてはそうですけどっ……」

「もう四度目なんだ。君の方も、いい加減、素直に聞けよ」
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