エリート外科医の一途な求愛
溜め息混じりに鋭く言われた。
聞いたことがないくらい低いトーンの声に、私も思わず口ごもる。


「君が好きだ。俺に、守らせてくれ」

「っ……」


甘く耳に響く各務先生の声に、私はただ息をのむ。


「俺に愛されて、素直に堕ちろ。……葉月」


どこか切なげに揺れた瞳が私に向けられ、初めて私の名前を呼ぶ声が小さく震えた。
そんなことにドキッとしている隙に、各務先生は大きく私に一歩踏み出し、月明りを遮るように背を屈めていた。


「か、各務先生……?」


近づく距離に、さっきから加速し続ける胸が苦しい。
逃げようと思えば、強く押しのけなくても彼から離れることが出来るのに、私はそうしなかった。
その理由は、自分でも説明出来ないまま――。


頬に触れていた手が、私の顎を掴む。
そのまま強引に持ち上げられ、覆い被さるように顔を寄せた各務先生に、私は唇を塞がれていた。


「っ、ふ……」


突然のキスに、私は大きく目を見開いたまま、唇から小さな声を漏らす。
そんな声に煽られるように、各務先生は私の目の前で目を伏せたまま、キスを深めてきた。


わずかに開いた唇の隙間から獰猛に挿し込まれた舌が、私の声も全て絡め取る。
息苦しさに、私は思わず各務先生の胸を叩いた。
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