エリート外科医の一途な求愛
今はプライベートの場と言っても、明日医局で顔を合わせる時、准教授である各務先生は上司だ。
心の中でそんな葛藤をして黙り込む私に、彼はウィスキーのグラスを揺らしながら、フッと短く息をついて笑った。


「何? 言いたいことがあるなら、言ってごらん。別に明日の仕事もそれ以降のことも、こんな飲みの席の言動でどうこうしないからさ」


そんな言葉にも、私はただ黙り込む。
返事をしない私がつまらなかったのか、各務先生は耳に聞こえるほど大きな溜め息をついた。


「それにしても……俺の誘いを断ってどんな用事かと思ったら。相手、アレ?」


蔑むようなその言葉に、イケメンの傲慢さが滲み出ていた。
私は無言のまま、キッと彼を睨み付けた。


「見た目で判断しないでもらえますか」


そう言い返した私を、各務先生は面白そうに噴き出して笑う。


「見た目ってつもりはないけど。それ以前に最悪じゃね? 約束に遅れてきたくせに、自分の劣等感ばかり曝け出して超一方的なことばっか言って、さっさと帰っていく男なんか」


それを聞いて、私も思わず口籠る。
各務先生に言われなくても、私自身あの彼に確かにそう思ったから。
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