エリート外科医の一途な求愛
今の仕事に就いてから始めた一人暮らし。
狭いけど自分の城のマンションの部屋で、お風呂を終え缶ビールを傾けながら、私はぼんやりと宙に目を彷徨わせた。


今日は最悪な一日だったな。
終わりがアレだったせいで、この一日の全てを否定したくなる。
クピッと缶を傾けながら、片手でスマホを操作して、ずんぐりむっくりの連絡先を削除した。


「はあ」


声に出して溜め息をつきながら、私はギュッと膝を抱え込んだ。


早苗には『イケメン嫌い』と言われたけれど、嫌いというわけじゃない。
私だってそれなりの美意識は持っているし、イイ男はイイ男だと思う。
性格どうこうじゃなく、顔がいい男をひと目でカッコいいとは思う。


あたり前に魅力は感じる。
だけど、それ以上は踏み込めない。
と言うのも、イケメンに対して最悪の思い出……トラウマがあるせいだ。


三年前、それまで勤めていた一般企業を辞めて今の医局に転職したのも、それが原因。
私は一つ年上の先輩と、入社当初から社内恋愛をしていた。


付き合いも長くなり、自分でも結婚目前と思っていた。
なのに、彼の浮気現場をこの目で見てしまったのだ。


彼は誰もが憧れるイケメンで人気があった。
社内恋愛は隠していたから、放っておいても女が寄ってくる。
問い詰めてみると、相手は同じ会社の別部署の後輩の女の子で、しかもほぼ私と並行して付き合っていたらしい。
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