エリート外科医の一途な求愛
気づかなかった私も私だけど、バレた後の彼の言い草が酷かった。


『葉月は美人だし、連れ歩くのにちょうどいいんだけど、結婚って言うと味がないんだよね』


開き直ってシレッとそう言って、絶句した私に更に信じられない言葉をたたみかけてきた。


『実は彼女、妊娠してるんだ。だから、バレなくても君とは終わらせるつもりだった』


言われた瞬間頭の中が真っ白になり、彼の部屋を飛び出してしまったことが、今となっては心残り。
逃げ出すんじゃなく、犯罪すれすれになるまで殴ってやればよかった。


小さな会社で、別れてからも顔を合わせることが苦痛だった。
長い付き合いで、それなりに噂もされていたみたいで、今度は別れたことが噂になり、私も知らない事実が耳に入った。


私が知った浮気は、氷山の一角。
『浮気』とは言えないたった一度だけの遊びは、積もるほどネタがあったらしい。


それ以来、顔がいい男の笑顔を見ても、白々しいと思うようになった。
何を言っていても嘘っぽくて信じられなくて、冷めた目で見るようになった。


すっかり居心地悪くなった会社は辞めて、転職して。
新しい仕事を始めた頃には、私はイケメンには全く心を動かさない女になっていた。


医局のドクターからの軽いお誘いも、全て笑顔で突っぱねる、棘のある花……高嶺の『バラ』と呼ばれるようになってしまったのだ。
< 17 / 239 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop