エリート外科医の一途な求愛
「各務君の研究の為には、それもチャンスだと思うんだよ。日本の心移植というのは、海外に比べて実績数も少ないし、臨床データも集めづらいだろう? オファーを受けて、他大学や病院との人脈を広げておけば、長い目で見て必ず役に立つ時がくる」
「そ、それは……」
教授が言いたいことはよくわかる。
つまり、最先端医療の研究だからこそ、未来を見据えて少しでも多くの症例、臨床データを集める環境作りが必要。
そう言うことだ。
私はそれ以上何も言えずに、話題の中心人物である各務先生を窺った。
彼はさっきから目を伏せたまま、ただ黙っている。
逡巡している表情はこのせいかと理解出来た。
各務先生は、学会の為にちゃんと準備をしてきた。
たとえ出席頻度が少なくても、学会は彼にとって研究成果の発表が出来る大事な舞台のはず。
大事な機会を取り上げられるという意味では、納得出来ない。
でも、教授の言う通りだということもよくわかっている。
だから今、各務先生は迷ってる。
自分でも揺れて、決断し切れずにいるんだ。
「学会の方は、木山君に任せて大丈夫だろう。彼なら後一ヵ月でも立派な論文を仕上げることが出来る。仁科さん、君も出来る限り補佐についてやって」
そう声を掛けられ、私はそっと目線を教授に戻した。
「そ、それは……」
教授が言いたいことはよくわかる。
つまり、最先端医療の研究だからこそ、未来を見据えて少しでも多くの症例、臨床データを集める環境作りが必要。
そう言うことだ。
私はそれ以上何も言えずに、話題の中心人物である各務先生を窺った。
彼はさっきから目を伏せたまま、ただ黙っている。
逡巡している表情はこのせいかと理解出来た。
各務先生は、学会の為にちゃんと準備をしてきた。
たとえ出席頻度が少なくても、学会は彼にとって研究成果の発表が出来る大事な舞台のはず。
大事な機会を取り上げられるという意味では、納得出来ない。
でも、教授の言う通りだということもよくわかっている。
だから今、各務先生は迷ってる。
自分でも揺れて、決断し切れずにいるんだ。
「学会の方は、木山君に任せて大丈夫だろう。彼なら後一ヵ月でも立派な論文を仕上げることが出来る。仁科さん、君も出来る限り補佐についてやって」
そう声を掛けられ、私はそっと目線を教授に戻した。