エリート外科医の一途な求愛
各務先生のがっかりした声を聞いて、私の胸はきゅんと疼く。
『ごめんなさい』と消え入りそうな声で謝りながらも、ついさっき飲み会で聞いた話を気にせずにはいられなかった。


お酒も進んだ頃、研修医たちが話題にしたのは、附属病院の循環器病棟でのとある噂話。
『よくある話ですけどねー』という前置きから始まったのは、ドクターとナースのいわゆる院内恋愛の噂だ。


それだけなら前置き通りよくある話だけど、院外まで噂になるほど取り沙汰されているのは、入院患者さんのご家族からクレームがあったからだと言う。


『そのご家族が、どこで何を見てクレーム言ってきたのかまでは謎なんですけど。病棟では、当事者二人が謹慎処分受けるほどの事態になってるんですよ』


病院のイメージとか世間体とか、そういう物に配慮した処分ということらしい。


『仁科さんって、医局に来る前は一般企業に勤めてたよね？　普通の社内恋愛でも、バレたら処分されたりするの？』


なんて聞かれて、私は変な汗を掻く羽目になった。
だけど私の脳裏をグルグル回ったのは、過去の社内恋愛のことなんかじゃなく、まさに現在進行中の各務先生との関係だった。


「万が一ってこともあるし。今は軽はずみな真似は避けた方がいいです」


医局内恋愛が禁止されてるなんて聞いたことはない。
でも各務先生の場合、病棟の二人より、マズい事態になるんじゃないだろうか。
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