エリート外科医の一途な求愛
「ど、どどどどうして!? な、なんで葉月さんが、各務先生と……?」


完全に混乱状態に陥った美奈ちゃんが、すごい勢いで木山先生に質問を浴びせている。
それを私は意味もわからずボーッと眺めていたけれど。


「なんでって。そりゃ、各務先生が仁科さんを連れて行くからでしょ」

「えっ……えええっ!?」


美奈ちゃんが上げた盛大な悲鳴のような声に、私は慌てて木山先生に駆け寄った。


「ちょっ……何言ってんですか、勝手なこと言わないでください!」


あまりの動揺で心臓がバクバクいってる。
それでも木山先生の白衣を強く掴んで引っ張ると、彼は『おっと』と呟きながら顎を引いて私を見下ろした。


「は、葉月さん! 一緒に行くってどういうこと? も、もしかして、葉月さんって各務先生と付き合ってたんですか!?」


美奈ちゃんまで椅子から立ち上がり、木山先生ではなく私目がけて突進してくる。
私と美奈ちゃんの間に立った木山先生が、「そうそう」と気の抜けたコーラみたいにサラッと呟いた。


「隠すことないじゃないか。各務先生がアメリカに行く。君は一緒に行って結婚する。だから、医局秘書も辞めなきゃならない。筋が通りまくってる話だろうが」

「けっ……!? 私、各務先生と付き合ってないです! それなのに、どこをどうすっ飛ばしたら結婚なんて話が出て来るんですか!?」
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