エリート外科医の一途な求愛
「そりゃ、プロデューサーさんが先生使いたい気持ちもわかりますよね~。だって、各務先生カッコいいもん! オペ中のキリッとした表情はもちろんですけど、普段は割と気さくで、そのギャップが女性視聴者から大人気なんだとか」

「まあ、わかるけどね……」


他のドクターがいないのをいいことに、美奈ちゃんは仕事そっちのけで両手の指を組み合わせ、ほわ~んと虚空を見上げている。
その様子に苦笑しながら、私は椅子に大きく背を預け、唇をすぼめてふうっと息をついた。


確かに、超エリートドクターの割に、各務先生は偉ぶったところがなくて、学生にも医局員にも人気がある。
そんな人に、いくらムッときたからって『顔が嫌い』は言い過ぎたかな、とちょっと反省した。


結構本気であ然とした顔してたなあ……。
昨夜の各務先生を思い出して、私はちょっと申し訳ない気分に駆られた、けれど。


――いやいや。
私が各務先生につれなかろうが、別に彼にとってはなんの痛手でもないだろう。
そんなこと、私が気にする必要はない。


ただの仕事のお礼で食事に誘ったりするのも、きっと私にだけじゃないはず。
まるで息をするようなあのスマートさで彼から誘われたら、普通の女性なら多分九割九分はOKするだろう。
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