エリート外科医の一途な求愛
夕刻、木山先生の学会を終えて、私は彼とタクシーで大学に戻った。
正門の前でタクシーを降り、料金を精算して領収書を切ってもらう。
それを受け取ると、先に降りていた木山先生の横を擦り抜け、ほとんど小走りになりながら医学部棟へ向かった。
「おい、医局に戻る間でも、俺と並んで歩くのは嫌かよ」
自分は悠々と歩きながらそう言った木山先生との距離は離れる一方。
そうじゃない。
ただ本当に急いでいるだけなのだ。
私の腕時計は、午後五時を指している。
今日の学会報告書をこれから作成して提出したら、帰れるのは何時になるだろうか。
頭の中は医局に戻った後の段取りでいっぱいだった。
各務先生は明日、アメリカに発ってしまう。
それなら、ゆっくり話すことが出来るのはもう今夜しかチャンスがない。
そう思ったら、話さなきゃいけないことが後から後から溢れ返ってきて、気持ちばかりが急いていた。
日中強い日射しに照り付けられたレンガ畳みの道を走るだけで、足元から身体が熱されていくような気がする。
太陽は西に傾いているとは言え、医局に飛び込んだ時、私は既に汗だくだった。
「葉月さん!!」
デスクに戻ろうとする私を待ちかねていたかのように、美奈ちゃんが勢いよく立ち上がった。
彼女の横を、『ごめん』と言いながら通り過ぎる。
「報告書、急ぎたいの。早く帰らなきゃ……」
正門の前でタクシーを降り、料金を精算して領収書を切ってもらう。
それを受け取ると、先に降りていた木山先生の横を擦り抜け、ほとんど小走りになりながら医学部棟へ向かった。
「おい、医局に戻る間でも、俺と並んで歩くのは嫌かよ」
自分は悠々と歩きながらそう言った木山先生との距離は離れる一方。
そうじゃない。
ただ本当に急いでいるだけなのだ。
私の腕時計は、午後五時を指している。
今日の学会報告書をこれから作成して提出したら、帰れるのは何時になるだろうか。
頭の中は医局に戻った後の段取りでいっぱいだった。
各務先生は明日、アメリカに発ってしまう。
それなら、ゆっくり話すことが出来るのはもう今夜しかチャンスがない。
そう思ったら、話さなきゃいけないことが後から後から溢れ返ってきて、気持ちばかりが急いていた。
日中強い日射しに照り付けられたレンガ畳みの道を走るだけで、足元から身体が熱されていくような気がする。
太陽は西に傾いているとは言え、医局に飛び込んだ時、私は既に汗だくだった。
「葉月さん!!」
デスクに戻ろうとする私を待ちかねていたかのように、美奈ちゃんが勢いよく立ち上がった。
彼女の横を、『ごめん』と言いながら通り過ぎる。
「報告書、急ぎたいの。早く帰らなきゃ……」