エリート外科医の一途な求愛
そして、どこか戸惑った表情を浮かべながら、ゆっくり大きく振り返る。
その目が私の姿を真っすぐ捉えて、大きく見開くのを見た。


「は、づき……!?」


その唇が私の名前を呼ぶのを見つめたまま、私は真正面から彼の胸に抱き付いた。


「えっ、なっ……!」


咄嗟に私を支えるように腕で抱き止めてくれながら、各務先生が混乱したような声を漏らすのを聞いた。
それでも私は、彼の胸に顔を埋め込みながら、背中に回した腕にギュッと力を込める。


「葉月? どうして……」


驚きで動揺を隠せていない声で訊ね掛けてきながら、各務先生が私の両方の肩に手を置いた。
軽く引き剥がされるように身体が離れ、私はそっと彼を見上げた。


「わ、私……」


思い切って、口を開く。
私の第一声は、ちょっと上擦って掠れた。


「いつ帰ってこれるかわからないのに、日本で先生を待つのは嫌です。いくら、先生が、三年で戻ってくるって誓ってくれても、私は約束出来ません」


走ったせいなのか、緊張なのか。
私の声は喉に引っ掛かりながら、ちょっと途切れ途切れになってしまう。


「だ、から。一緒に行く。お願い、連れて行って、ください……!」

「え」


息を吐き出すようにして言い切った私に、各務先生はなんとも短く聞き返してきた。
さっきから大きく見開いた目は、完全に瞬きを忘れて私に注がれている。
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