エリート外科医の一途な求愛
まっすぐ見つめ返す私と宙で視線がぶつかる。
彼がゴクッと喉を鳴らすのが聞こえた。


「連れて、って。……マジで?」


よほど驚いているのか、彼の瞳に困惑の色が過る。
私は目を逸らさずにまっすぐ見つめたまま、大きく一度頷いてみせた。


「き、木山先生に後押しされるなんて、思わなかった。待てないなら一緒に行けって。好きって気持ちがあれば、追い掛ける理由として十分じゃないかって……」

「木山先生が?」


まだ戸惑いの色が濃い口調で聞き返されて、私はもう一度首を縦に振って見せた。


「お餞別、って。飛行機のチケット、くれて……」


私の視界の中で、各務先生が訝しそうに首を傾げる。


「一緒に行って、各務先生を帰って来させないようにしろって」


彼は、私のその言葉には『え』と絶句したけれど、私はぎこちなく笑い掛けた。


「あの人に協力なんかしたくないけど、今回ばかりは甘えさせてもらいました。……調子いいけど……」

「……はは」


各務先生も、ようやくこの現状を受け入れたのか、どこか乾いた笑い声を上げた。
そして、一度ガックリとこうべを垂れて、大きな大きな溜め息をついた。
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