エリート外科医の一途な求愛
そんな各務先生の表情を確かめるように、私は彼の顔を下から覗き込んだ。
まだちょっと瞳の中で光が揺れている、けれど。


「……いいのか? 連れて行って」


探るような小さな声に、私は一瞬だけ間を置いて、大きく頷いて返事をした。


「はい。……あの、私でも、役に立てること、ありますよね……?」


そう言って逆に探り掛ける私に、彼はハッと浅い息を吐いて笑った。


「アメリカまで一緒に来て、秘書やるつもりじゃないだろ?」

「え?」

「え?じゃねえ。……もっと色っぽい意味合いで、連れて行っていいんだろ?」


私が見つめる先で、各務先生はツーッと横に視線を逸らす。
ちょっと焦れたようなその表情に、私の胸の鼓動はドッキンと大きく跳ね上がった。


「は、はい」


返事をした途端、ドキドキが急激に加速し始める。


「あの……好き、です。各務先生」


伝えたかった、たった一言。
言いながら恥ずかしくなって、私まで彼から視線を横に逃がした。
なのに。


「……あの……?」


私としては、やっとはっきり告げることが出来た気持ちなのに、各務先生からはなんの反応も返ってこない。
今度は私が焦れた気分で、一度逸らした視線を再び彼に戻してみると。
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