エリート外科医の一途な求愛
この強気な笑みを、なんだか久しぶりに見た気がする。
それだけでドキッとして、膨らませたままの頬が熱くなる。
なのに。


「覚悟しとけよ。アメリカ着いたら、散々焦らされた分、思いっ切り愛してやるから」


私の耳元で、そんな宣戦布告を囁いて――。


「……ん、んっ……」


息を吸うタイミングを完全に狂わされたまま、私の唇は彼のそれに塞がれていた。
くぐもった声を漏らすほんの少しの間に、私の口内にすぐに熱い舌が挿し込まれ、なにもかも、根っこから絡め取られていく。


苦しいのに嬉しくて、私は彼の首に両腕を巻き付けて抱き付いた。
各務先生も、深いキスを続けたまま私の腰を抱き寄せてくれる。


「……アメリカ着いたら、木山先生にお礼のメールしとかなきゃ」


思わずそう呟くと、ちょっと離れた唇の先で、彼がムッと口をへの字に結んでいた。


「俺とキスしてる時に、他の男のこと考えてるんじゃねえよ」

「い、いや! 考えてたんじゃなくて!」

「いいよしなくて。ちょっとお祝儀に上乗せするくらいで」

「……ん?」


まだ鼻先が触れるほどの近い距離で呟く彼の言葉に、私は思わず首を傾げた。
そして、ギョッとしながら目を剥く。
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