エリート外科医の一途な求愛
「お、お祝儀って。木山先生、結婚するの!?」


本気で驚いた。
相手は誰だ!?と、そこまで思考が動いたのに。


「さあ。長い目で見たら、いつかはするんじゃないか?って思っただけ」


各務先生は、どこまでもシレッとそんな返事をする。
思わずがっくりした私に、彼はクスッと笑った。


「まあ、いつか……教授になる頃には、出来るといいねってこと」


ちょっと濡れた彼の口元が意地悪に歪むから、上から目線で言ってるのはわかる。
思わず苦笑しながら各務先生の瞳を覗き込むと、彼はフッと小さな息をついた。


「それよりも、俺たちの方が先。……だろ?」


耳をくすぐる低い声に、ドッキンと鼓動が跳ね上がる。
私は一度小さく頷いて、振り切ったように大きく頷き直した。


「……はい」


私の返事をしっかりと耳にして、各務先生はとても優しくニッコリと笑ってくれた。


この人について、アメリカに行く。
この人の人生に、私は一生ついていく。
そんな約束まで交わした気分で、私はちょっとふわふわした気分になる。


恥ずかしくて、彼の胸に顔を埋めて隠した。
再び強く抱き締めてくれる腕に身を預けながら。


「……颯斗」


とても強くて頼もしい、愛しい人の名前を呟いた。
< 227 / 239 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop