エリート外科医の一途な求愛
十月に入り、肌に纏わり付く空気は急に冷たくなった。
日本とは違う気候の変化に戸惑いながら、両手に抱えていたスーパーの買い物袋を、キッチンの床にどさっと落とした。


無意識にふうっと息をつきながら、一度キッチンを出てリビングに向かう。
白い壁に掛けてあるカレンダーを見て、今日は早いな、と、ちょっと胸を弾ませた。


『よし』と袖を捲り上げながら、私は再びキッチンに向かう。
まだ時計は午後三時を差したところだけど、今から仕込めばかなり豪華な料理が出来るはずだ。


今日の颯斗は午前中からオペが入っているけど、それは前から予定されていた物で、ちょうど今頃には終わってるはず。
だから、何事もなければ、真っすぐ家に帰ってきてくれる。
一緒に生活を始めて一ヵ月目のこの日を、お祝い出来る。


突然私を連れてアメリカに来たはずなのに、颯斗に用意されていたのは、ファミリーでも十分広い4LDKの可愛らしい一戸建ての家だった。
カントリーハウスみたいな外観に、家庭菜園が出来そうな庭。


あまりの広さに、初めてここに入った時は、颯斗ですらポカンと口を開けていた。
だけど、連れて来てくれたメグさんは満足そうに胸を張っていた。


『だって、絶対ハヅキを連れてくると思ってたから。長い目で見て、子供が出来たらこのくらいの広さは必要でしょう？』


そう言われて私は焦ったけど、颯斗はちょっと困ったように笑いながらも、『サンキュ』と言っただけだった。
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